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jam函館、道南便りのページで連載中の『ハコダテノヒト』。
2/20発売の3月号では、法テラス函館法律事務所の波戸岡光太さんにインタビューしてきました。
今回も、紙面で紹介しきれなかったその内容をココでご紹介したいと思います。
ハコダテノヒト 第十二回…波戸岡 光太さん(はとおか こうた)さん
(法テラス函館法律事務所 弁護士)
(略歴)
横浜出身、34歳。慶応大学卒。
ロースクールに通い、平成19年に弁護士登録。
その後、東京の法律事務所に勤務するも、司法過疎問題を考え人員不足に悩まされる地方での勤務を希望。
今年1月から函館の法テラスに着任。
jam(以下・j)「今日はよろしくお願いします。さっそくですが、波戸岡さんが弁護士になろうと思ったきっかけを教えてもらえますか?」
波戸岡(以下・波)『一言で言えば、素朴な正義感です。
誰でも持っているような、困っている人がいたら助けてあげたいと思う気持ちで、大人になってそういうのを行う手段は何だろうと思ったときに“法律”というものがあれば色んな人を救えるんじゃないかと…。
それで資格が必要だから、弁護士の資格を取ったんです。困っている人、泣き寝入りしている人がいたら手を差し伸べてあげたいと思っています。』
j「まだ波戸岡さんはお若いですけれど、本格的に弁護士として仕事を始めたのはいつ頃からですか?」
波『平成19年の12月に弁護士登録をしまして、去年の1年間ぐらいは東京の法律事務所で働いていました。それから函館に来ました。』
j「まだ来て間もないですが、函館はどのような印象ですか?」
波『いいところですね。過ごしやすいですし、近いところに楽しめる場所やおいしい店もありますし。』
j「先ほど弁護士を志したきっかけについて聞かせて頂いたんですが、たとえば弁護士以外でも警察官といった他の職業もありますよね。
その中でも弁護士を選んだのは“法律”といった分野に興味があったからなのでしょうか?」
波『そうですね。もちろん世の中に誰かの役に立つという職業はたくさんありますが、僕の場合は“法律”という部分に魅力を感じたんです。
よく言うかもしれませんが、「体の病気を治すのが医者なら社会の病気を治すのは法律家だ」という言葉があるんです。
法律家の中でも裁判官、検察、警察と色々あるんですが、僕がどうして弁護士を選んだのかというと、依頼者と継続的に関わっていけるからなんです。最初は辛くて肩を落としていた人も、だんだんと元気になっていくんです。』
j「弁護士さんに相談するというのは、その人にとって本当に困った事態になったときですよね。」
波『はい。たとえば夫からひどい暴力を受けていた人は、まずは身の安全を確保するため住居を変えて、新しい場所での生活の方法をアドバイスします。そしてだんだん自分の生活を取り戻していくと、本当に元気になっていくんです。
そういった部分に長く関わっていけるのは弁護士だけなんじゃないかなと思います。裁判官や検察は、裁判のときにしか関われないんですよ。』
j「なるほど。裁判官や検察だとその時にしかその人を見ることが出来ない…。それは、情報などを元に想像するといった難しいことですよね。
一方、弁護士は最初からその人を知って、しっかり最後まで関わっていけるんですね。」
波『そうなんです。そこがこの仕事の魅力かな、と思います。』
j「私は普段、法律といった世界に関りがなかったんですが…やはり今、毎日のように耳にする『裁判員制度』の事を考えるとちょっと勉強しなくてはいけないと思うんですよ。弁護士の方から見てこの制度について率直な意見を伺いたいのですが…。」
波『この制度の担い手である僕たち法律家は、成功させなくてはいけないと思っています。なぜこのような制度を作ったのかというと、国民に解りやすく常識に適った裁判を目指すためなんです。
僕たちは、それが実現するように努力するのみです。
担い手である以上は「こんな制度は駄目だ」とか一歩引いた見方をしてはいけないと思うんですよ。これからどうなるか分からない制度ですし、人の手によって動いているのですから、一歩引いた考えは持たないようにしています。』
j「ですが、私たちのように法律に関してまったくの素人が関わっていくのは、同時にとても危険なことにも思えるのですが…。」
波『一般の方、法の知識がない方がやるのですから、先入観を持たれたりとか事実と違う方向に流れたりとかになるかもしれない…そういった危険は常にあると思っています。それはまずい、と思う気持ちもありますがそうならないようにどうすれば良いのか…そういうことに僕たちが考えや力を注ぐんです。』
j「裁判というと映画でしか見たことがないのですが、論理的な根拠や証拠を積み重ね結果を導き出すものですよね?
ですがそこに裁判員、一般の人が入ってくると情緒的なほうに流れるんじゃないかな…と。それはあまりいい事ではないですよね?」
波『刑事裁判で、論理を駆使して…ってことはあまり無いですね。』
j「そうなんですか?」
波『むしろ、その辺はシンプルですよ。人は理屈ではなく感情で動く部分はあると思いますし、そういった部分はやむを得ないと思っているんです。
こちらの役目としては事実を出すことです。
事実を元に感情は動くものですから。
検察官は悪い事実を提示して、弁護側は反省しているなどの良い事実を提示し、そういった材料を提供した上で判決を出すというのは特に不健全なことではないと思います。』
j「なんだかイメージでは違うと思っていました。」
波『模擬裁判やシミュレーションをやっているとそういった懸念もあると思いますが、実際は事実を元にして皆さん判断されると思いますので、あまり悪い方にはいかないかなと思います。』
j「波戸岡さんは刑事裁判に携わることもあるんですか?」
波『ええ、多いですね。法テラスは扶助や支持といったものがありますが、要は金銭的な面で法律をサービスするところなんです。
民事と刑事がありますが、民事に関しては扶助でサービスする。刑事では国選弁護という形でサービスします。僕が去年一年間関わった割合では、民事6割、刑事は3、4割ぐらいです。』
j(ノダケン)「『裁判員制度』なんですが、僕はもし通知が来たらぜひ行きたいと思っているんですよ。でも、世間では評判悪いですよね。」
j(お姫)「絶対に行きたく無いとかってよく聞きますね。」
波『「行きたくない」と言っている人の感情は変なことではないと思います。
僕だって裁判所はちょっと苦手な場所ですし…普通の雰囲気じゃないですよね。(笑)』
j(ノダケン)「そんな経験はなかなか無いですから、僕は何を差し置いても行きたいですね~。」
j(お姫)「でも、私は行きたくない人の気持ち分かるような気がします。
人の運命を決める大事な裁判に関わってしまうのは、もの凄いプレッシャーを感じてしまうというか…。もちろん、選ばれたとしたら参加してちゃんと考るんですが、でも、自分の采配一つでその人の運命が左右されてしまうかもしれないという責任が恐いと思うんですよ。
私たちには法律に関する知識も全くないですし…。」
j(ノダケン)「僕は考え方だと思うんですよね。もし『裁判員制度』がなかったとしても、我々の知らないところで事件は起き、判決が出ている訳じゃないですか。その結果を見て反対の意見を持つ人もいる。
だったら、その場に出てきて意見を言うべきじゃないかなと。」
波『そうですね…。まず、法律の知識に関してはまったく要らないと思います。むしろまっさらな状態で来て頂いて、事実を見て、人としてどう思うかを素直に言って頂ければ…。それが『裁判員制度』だと思います。
もし、事実ではなく人の感情だけで変な方向に行ってしまったら、それはこちらの責任です。』
j(お姫)「もっと難しいものだと思っていました…。」
波『普通はそう思ってしまいます。変な方向に行くようだったらちゃんと裁判官が誘導します。たとえば、同じ事件でも誰が見たかによって見えてくる状況は違ってきたりしますよね。
そして不条理な判決に向かってしまう事だってあるんです。そこに一般の方が入ってくれれば、もう少し常識的な判決へ向かう可能性が『裁判員制度』にはあるんじゃないかと思います。』
j「ところで、法テラスの弁護士になるというのは自分から希望するのですよね。波戸岡さんが函館に来たのは、ここの法テラスでの勤務を希望したからなのでしょうか?」
波『そうです。北海道への赴任を希望していたところ、函館が受け入れてくれました。」
j「北海道を希望した理由というのは?」
波『まず、法テラスの理念として、困っている人・金銭的に余裕のない人にも法律のサービスを、というのがあります。
それと、医者と同じで東京や大都市に弁護士が集中し、地方に弁護士がいないという問題があるんです。
これを『司法過疎』というのですが、僕がこの問題を知ったのが受験生の頃だったんです。当時、司法過疎を解消するために東京から1人で地方に行った弁護士の方がいて、その方の講演を聞き、僕も弁護士になったら若手の内に東京を離れ、地域のために精一杯やってみたいと思ったんです。
その方は紋別に行ったので、僕も北海道への赴任を希望するようになりました。』
j「こちらで実際に働いてみて、東京と比べて相談内容などにギャップはありましたか?」
波『いえ。借金、離婚、消費者被害といった事件の内容は特に変わりません。』
j「では内容別に分類したときの割合では変わってくるんでしょうか?」
波『まだ函館に来て間もないので、その辺は何とも言えないですが…
函館の法テラスでのデータでは借金に関するものが多いですね。』
j「そうなんですか。ところで、波戸岡さんは昨年弁護士になられたということは、ロースクールに通っていたのですか?」
波『そうです。ロースクールの第一期です。新しい司法試験の第1回目でした。』
j「一度、社会に出られてからロースクールにに入ったのですか?」
波『ええ、地元の学習塾で教師をしていたんです。
司法試験に受かるのには時間が掛かった方だと思います。』
j「ちなみに…1日どれくらい勉強されていたんですか?」
波『最初の頃は15時間ぐらいしていましたよ。起きている間はずっとでした。』
j「わ~…1日中ですね…。」
波『ロースクールでも勉強している内容や量は変わらないんです。』
j「やっぱり、受かったときは大感激でしたか?」
波『ほっとしました。7回受けたんですが途中で諦めようとは全く思いませんでしたし、失敗すればするほど絶対に受かってやろうと思っていました。
実際に弁護士になって相談を受けて、僕の「大丈夫ですよ」という一言で、ぼろぼろと涙を流す人もいたんです。その時、僕はこういう仕事をしたかったんだと、改めて自覚しました。』
j「なるほど。本当に弁護士を目指す人は、諦めずに挑戦し続けるんですね。」
波『弁護士だって六法全部覚えているわけではないんです。
もちろん基礎的な知識はありますが、どう調べたら良いかといった検索能力が必要となってきます。』
j「しかし、『知識で働く』というのはかっこいいですね。」
波『おもしろいのが、あれだけ本があるのに書いていないこともあるんですよ。そういうときに、知識がないから分かりませんではなく、そのケースに近い条文があり、この部分は当てはまるからそこを活用して解決したり…という事もあるんです。』
j「日本語特有のことだと思いますが、どんな事例にも解釈の仕方がいくつかに分かれる事があると思うのですが…。」
波『必ずものには幅というものがあるんです。
その幅のどっちに引っ張るかというときに、まず法があって目的は何か、何を目指しているのかを見極めるんです。そして自由な幅があるときは、法律の解釈の可能な範囲で依頼者に最も有益な方を目指します。
もちろん相手方は逆の方にひっぱり、裁判官が判決を下すんです。そういう意味で裁判官は大変ですね。』
j「たとえば、相談者本人にとっては真実だったとしても話を極端にすることってありますよね。」
波『そこは、依頼者のためにもしっかりとした事実を調査します。どうしても裁判や法律上無理なことは当然あります。何でも鵜呑みにしてしまうのはプロではないのです。あとで何らかの事実が出てきたら、それは隠していた依頼者が悪いのではなく、ちゃんと聞き出すことが出来なかったこちらが悪いのです。』
j「では、それだけ相談を受けるときは念入りに話を聞き出すのですね。」
波『そうです。聞き取る能力というのは非常に大事です。
法律だけ勉強していれば出来ることではないので、常に磨いていかなければいけません。』
j「コミュニケーション能力が必要ですね。
ですが、中には自分にとって都合の悪いことだけ全部訴えたら何とかしてくれるのではないか…と思っている人もいるのでは?」
波『う~ん、いますね(笑)』
j「ですが、コミュニケーション能力はなかなか身につくものではないですよね。ロースクールはその限りではないかと思うのですが、司法試験の勉強はずっと一人でコツコツとするものですよね?
そしていざ受かって、いきなり現場に出てシフトチェンジするというのは簡単に出来ないものではないですか?」
波『はい、出来ない人もいるでしょうね。
弁護士の資格は勉強が出来ないと受かりませんが、それだけでは駄目なんです。運転免許と同じで、弁護士の資格はあくまで法律家として活動するための最低限の資格です。依頼者が「この人に任せたい」と思うのは、法律的な能力より人間的な魅力や信頼感だったりするんです。
本当に凄い弁護士達は法律の知識はもちろん、それ以上に人間的な魅力があるんです。勉強だけでは身に付かない能力ですね。』
j「なるほど。知れば知るほど、弁護士というのは色んな能力が必要な職業なんだと実感します。
ところで、函館の法テラスには何年いらっしゃる予定なんですか?」
波『3年です。』
j「その期間が終わりましたら、また別の法テラスへ行くんでしょうか?」
波『そういった選択もありますし、東京に戻って一般の弁護士として働くという選択肢もあります。』
j(ノダケン)「しかし…ちょっと話が逸れてしまうんですが、この弁護士バッチかっこいいですね(笑)。重厚感がありますね~。」
j(お姫)「私、テレビでしか見たことがないです。
けっこう分厚いんですね。しかも大きくて目立ちますね。」
波『(笑)これ、メッキなので使っていくうちに薄くなっていくんですよ。
ベテランの先生達はいぶし銀の鉛色になっているんです。』
j「お~。では、バッチを見ただけでその方の経験がだいたい分かるんですね。」
波『ええ、金色だと「まだ新人だな」っていうのが直ぐに分かります。』
j「なるほど~知りませんでした。今日はお忙しい中、色々とお話を聞かせて頂いてありがとうございました。これからもお仕事頑張って下さい!」
波『いえ、こちらこそありがとうございました。』
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※このエントリーは「函館情報市場『ハコイチ!』」が行っています。
